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遺言書を見つけたら検認手続きはどうする?遺言書がない場合の相続分配まで解説

遺言書を発見した瞬間、多くの人は何をすべきか、どのように進めるべきかについて疑問を持ちます。特に、亡くなった方が残した遺言書が自筆証書遺言だった場合、家庭裁判所での検認手続きは避けて通れません。では、具体的にどのような手続きをする必要があるのでしょうか?

本記事では、遺言書の検認から、遺言書がない場合の相続分配までを解説します。

 

遺言書の検認とは?

遺言書の検認は、主に以下の二つの目的を持ちます。

  • 遺言書の存在とその内容を相続人へ知らせること。
  • 遺言書の偽造や変造を防ぐこと。

遺言書があることを知ったら、遺言書の保管者や発見者は速やかに検認請求をしなければなりません。しかし、全ての遺言書が検認を必要とするわけではありません。遺言書の形式には「普通方式遺言」と「特別方式遺言」があり、検認が必要なのは主に普通方式遺言の中の「自筆証書遺言」及び「秘密証書遺言」です。

検認が必要な遺言書のケース

検認が必要なケースは、遺言書情報証明書のない自筆証書遺言と、秘密証書遺言です。これらは個人が作成し、法務局に保管されていないものや、内容を秘密にして公証役場に登録されたものを指します。一方で、遺言書情報証明書がある自筆証書遺言や公正証書遺言は、検認の必要がありません。

検認をしないとどうなる?

検認を要する遺言書に対し検認を行わないと、最大5万円の過料が科されることがあります。さらに、検認の申立てが遅れると、相続放棄や限定承認の期限を逃すリスクがあります。また、検認をせずに放置すると、遺言書を隠匿したとみなされ、相続資格を失う可能性もあります。

遺言書検認の申立て方法

遺言書の検認申立てには、遺言書の保管者や発見者が関わります。申立て先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立てには、遺言書、申立書、遺言者及び相続人全員の戸籍謄本などの書類が必要になります。

申立てに必要な書類と費用

申立てには、遺言書、申立書、遺言者と相続人の戸籍謄本・除籍謄本、連絡用の郵便切手が必要です。これらの書類は、遺言書の検証を行う上で欠かせないものとなります。特に、遺言者の戸籍謄本・除籍謄本は、遺言者の生涯にわたる戸籍の移動を確認するために重要です。相続人全員の戸籍謄本は、遺言書に名前が記載されている相続人が正しいかを確認するために必要となります。

申立てには費用が伴います。遺言書1通につき、検認手数料として800円の収入印紙を裁判所に提出する必要があります。また、検認後に検認済証明書を申請する際には、遺言書1通につき150円の手数料がかかります。さらに、申立てに必要な書類の取得や郵送にもそれぞれ費用が発生するため、トータルでの費用は事前に確認しておく必要があります。

検認申立ての流れ

検認の申立てから完了までの流れは以下の通りです。

  1. 準備: 必要書類を揃えます。これには、戸籍謄本の取得や申立書の作成が含まれます。
  2. 申立て: 揃えた書類をもって、家庭裁判所に検認の申立てを行います。申立ては、直接持参するか郵送で行うことができます。
  3. 通知: 申立て後、家庭裁判所から検認期日の通知が届きます。この期日までには、遺言書を開封せずに待つ必要があります。
  4. 検認当日: 指定された日に家庭裁判所に出席し、検認に参加します。この際、遺言書が開封され、その内容が確認されます。
  5. 検認済証明書の申請: 検認が完了した後、検認済証明書を申請します。これにより、遺言書の内容が正式に認められ、相続手続きなどに使用することができます。

遺言書がない場合の相続分配

遺言書がない場合、相続は民法に定められた法定相続分に従って分配されます。法定相続人は、配偶者、子供、親、兄弟姉妹となり、それぞれに相続する割合が定められています。遺言書がない場合には、これらの法定相続人が協議して遺産分割を行うことになりますが、協議が整わない場合には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

遺言書の検認手続きや遺言書がない場合の相続分配には、様々な手続きが伴います。遺産を適切に分配するためには、法的な知識と正確な手続きが求められるため、専門家である税理士や弁護士への相談が推奨されます。

相続が発生した際、遺言書の有無に関わらず、まずは相続人が全員で話し合い、遺産分割についての合意を試みることが大切です。遺言書が存在する場合でも、その内容が全ての相続人にとって公平であるとは限らないため、遺言の内容に対する異議申し立てや調整が必要になることもあります。

相続分配における注意点

相続分配を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 相続税の申告: 相続が発生した場合、相続税の申告および納税が必要になる場合があります。相続税の申告期限は、相続発生から10か月以内です。適切な評価額の算出や節税対策を行うためにも、専門家のアドバイスが役立ちます。
  • 遺産分割協議書: 相続人間で遺産分割について合意ができた場合、その内容を遺産分割協議書に記載し、全員で署名押印することで、後日の紛争を防ぐことができます。
  • 不動産の名義変更: 不動産を相続する場合には、法務局で名義変更の手続きが必要です。この手続きには、遺産分割協議書が必要となるため、正確な書類作成が求められます。

相続における節税対策

相続税の負担を軽減するためには、生前の節税対策が有効です。生前贈与や遺言書による遺産の指定分配、小規模宅地の特例など、さまざまな節税手法が存在します。これらの対策を行うためには、専門家のアドバイスを仰ぐことが重要です。

まとめ

遺言書が存在する場合もそうでない場合も、相続は複雑な手続きとなり得ます。適切な手続きを進めるためには、相続に関する法律の知識が必要です。また、相続税の節税対策を考える際には、税理士のような専門家のサポートを受けることが賢明です。相続は多くの場合、感情的な側面も伴うため、公平かつ円滑な遺産分割を実現するためには、相続人間でのコミュニケーションが非常に重要になります。不明点や心配事がある場合は、お早めに当事務所へご相談ください。