株の相続税はどれくらい?評価方法と節税のポイントを解説します。
2024年10月01日
相続財産に含まれる株式の評価は、相続税の計算において重要な要素となります。株式を相続する際には、その株価に基づいて相続税が発生することがありますが、評価方法や節税のポイントによっては、税額を大幅に抑えることも可能です。
この記事では、株の相続税がどのように決まるのか、評価方法、さらには節税対策について解説します。
1. 株の相続税はいくらかかる?計算の大まかな流れ
株式の相続税は、相続財産の一部として計算されますが、その評価方法にはいくつかのポイントがあります。まずは、株式の相続税がどのように計算されるのか、基本的な流れを見ていきましょう。
1-1. 1株あたりの評価額(株価)を算出
株式の相続税を計算する際には、まず1株あたりの評価額(株価)を算出します。この評価方法は、上場株式か非上場株式かによって異なります。
上場株式の場合
上場株式の評価は、証券取引所における取引相場を基準に行われます。具体的には、以下の4つの基準から最も低い価格を採用します。
- 相続発生日の終値
- 相続発生月の毎日の終値の月平均額
- 相続発生月の前月の毎日の終値の月平均額
- 相続発生月の前々月の毎日の終値の月平均額
非上場株式の場合
非上場株式は取引相場がないため、国税庁が定めた「財産評価基本通達」に従って評価されます。株主が同族株主かどうかによって評価方法が異なり、同族株主であれば「原則的評価方法」、それ以外の株主であれば「配当還元方式」で評価されます。
- 原則的評価方法:株式を発行している会社の規模や業種によって、評価方法が異なります(大会社:類似業種比準方式、中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式の併用、小会社:純資産価額方式)。
- 配当還元方式:直前の2年間の配当額を基に、株式の評価額を決定します。
1-2. 1株あたりの評価額に保有株数を掛けて全体の評価額を算出
次に、1株あたりの評価額に保有株数を掛けて、全体の評価額を計算します。
1-3. 全体の評価額に規定の税率を掛けて相続税を算出
株式の評価額が算出されたら、他の相続財産と合算し、相続税の計算を行います。相続税は累進課税方式を採用しており、相続財産が多いほど高い税率が適用されます。
2. 株にかかる相続税の計算例
具体的な計算例を見てみましょう。
例えば、C社の上場株式10,000株を相続した場合、相続発生時の株価が以下の通りとします。
- 相続発生日の終値:9,700円
- 相続発生月の毎日の終値の月平均額:9,500円
- 相続発生月の前月の毎日の終値の月平均額:9,200円
- 相続発生月の前々月の毎日の終値の月平均額:8,600円
最も低い価格である8,600円を採用し、株式の相続税評価額を計算します。
- 株式の評価額:8,600円 × 10,000株 = 8,600万円
- 相続税額:(8,600万円 – 基礎控除3,600万円)× 20% – 控除200万円 = 800万円
このように、相続した株式に基づく相続税額は、株価や保有株数に応じて決定されます。
3. 株の相続に関する節税対策
株式の相続税を抑えるためには、いくつかの節税対策があります。事前に対策を講じることで、相続税の負担を軽減することができます。
3-1. 生前贈与
生前に株式を贈与して、相続財産を減らす方法です。特に株価が低い時期に贈与を行うことで、節税効果が高まります。
- 暦年贈与:年間110万円の基礎控除を活用し、少しずつ株式を贈与する方法です。
- 相続時精算課税制度:累計2,500万円まで贈与税がかからない制度ですが、贈与された株式は相続税の対象となります。
3-2. 自社株の評価額の引き下げ
非上場株式を保有する場合、株価を低く抑えることが節税につながります。例えば、役員報酬の引き上げや配当の抑制などが効果的です。
3-3. 各種特例の活用
株式の相続には、さまざまな特例が用意されています。例えば、「事業承継税制」や「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を活用することで、相続税の負担を軽減することができます。
4. 株の相続にあたっての流れ
株式を相続する際の手続きの流れを整理しておきましょう。
- 遺言書の有無を確認し、相続人間で遺産分割協議を行う
- 証券会社に連絡して、被相続人の保有株式を確認する
- 残高証明書を取得する
- 株式の名義変更を行う
- 相続税申告・納税を行う(相続発生から10カ月以内)
5. 株の相続税で困ったら税理士に相談
株式の相続税計算や手続きは、専門知識が必要です。特に非上場株式の評価は複雑であるため、相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。
税理士に依頼することで、手続きをスムーズに進め、相続税のリスクを減らすことができます。
6. 株の相続税に関するよくある質問
ここでは、株式の相続税について、よく寄せられる質問をわかりやすく解説します。
株を相続しても相続税がかからない場合はあるのでしょうか?
株を相続しても、他の財産と合わせた総額が基礎控除内であれば相続税は発生しません。たとえば、法定相続人が3名の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3)となります。この額より少ない相続財産であれば、相続税はかかりません。
また、非上場企業の株式の場合、その会社が債務超過である場合は株価の評価が0円となることがあり、相続税がかからないケースもあります。ただし、会社に対して貸し付けた金額がある場合、その貸付金は相続財産として課税対象となるので注意が必要です。
株をそのまま相続するのと売却して現金化してから相続するのでは、どちらが良いでしょうか?
株をそのまま相続するか、売却して現金化するかは、相続人の状況や株の種類、相続財産の総額によって異なります。株を売却すると譲渡所得税がかかるため、税負担が大きくなる可能性があります。一方、相続時に株価が高いと、その分相続税も増えるため、その後の値下がりで結果的に納税負担が重くなることもあります。それぞれのケースに応じた慎重な判断が必要です。
自社株の評価額が高くて相続税の支払いが難しい場合、どうすればよいでしょうか?
自社株の評価額が高く、相続税を一度に支払えない場合は、分割納付が可能な「延納」や、財産をそのまま納税に充てる「物納」の制度を利用することができます。ただし、これらの制度を利用するには、事前に条件を満たしておく必要があるため、専門の税理士に相談して適切な対策を講じることが大切です。
まとめ
株式の相続税は、上場株式か非上場株式かで評価方法が異なります。株価の動向や保有株数に応じて相続税額が決まり、事前に節税対策を講じることで負担を減らすことが可能です。相続税に強い税理士に相談しながら、正しい手続きと節税対策を行うことが大切です。