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基礎控除の引き下げで相続税の税務調査が増加?その背景を解説!

2015年に行われた相続税の基礎控除額の引き下げによって、以前より多くの人が相続税を支払う対象となりました。この改正により相続税の申告件数が増加し、相続税に関する税務調査も増加する傾向にあります。本記事では、基礎控除額引き下げの背景や相続税の仕組み、税務調査の現状について解説します。将来の相続に備え、適切な対策を講じるために参考にしてください。

 

1. 相続税の基礎控除とは

相続税には「基礎控除」と呼ばれる、相続税の課税対象を減らすための制度が設けられています。相続税は、亡くなった方の財産を相続した際に課税されますが、すべての財産が対象となるわけではなく、基礎控除額を超えた部分のみが課税対象となります。

1-1. 基礎控除の計算方法

基礎控除額は、法定相続人の数に応じて変動します。基礎控除の計算式は以下のようになります。

「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」

例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人の場合、基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円」となります。つまり、相続財産の合計が4,800万円以下であれば相続税はかからず、申告の必要もありません。

 

1-2. 平成27年の基礎控除額引き下げ

2015年(平成27年)の税制改正により、基礎控除額が引き下げられました。それ以前は、「5,000万円 + 法定相続人数 × 1,000万円」という計算式で控除が行われていましたが、改正後は「3,000万円 + 法定相続人数 × 600万円」となり、控除額が大幅に減少しました。この改正によって、以前は相続税の対象外だった家庭でも、相続税の支払い義務が生じるケースが増えました。

 

1-3. 基礎控除引き下げの影響

基礎控除が引き下げられた結果、相続税を支払う必要のある家庭が急増しました。特に都市部では不動産の評価額が高いため、相続財産が基礎控除を上回るケースが多くなり、相続税の申告件数が倍増しました。これにより、相続税の申告義務がないと考えていた家庭でも、相続税の申告が必要になることがあります。

 

2. 相続税の課税対象となる財産とは?

相続税の対象となる財産には、現金や不動産だけでなく、さまざまな種類の資産が含まれます。相続税は、亡くなった方が生前に所有していた財産に対して課税されますが、すべての財産が対象になるわけではありません。

2-1. 課税対象となる主な財産

相続税の課税対象となる主な財産は以下の通りです。

  • 現金、預貯金:亡くなった方が所有していた現金や銀行口座にある預貯金。
  • 有価証券:株式や債券、投資信託などの金融商品。
  • 不動産:土地や建物の所有権。
  • 死亡保険金:死亡保険金も一定の控除を超える場合は課税対象になります。
  • その他の財産:宝石、車、美術品、貸付金なども課税対象となる場合があります。

 

2-2. みなし相続財産とは?

「みなし相続財産」とは、亡くなった方の名義ではないものの、相続財産として扱われる財産です。代表的なものとして、死亡保険金や死亡退職金が挙げられます。これらの財産も相続税の計算に含まれるため、申告が必要です。

 

3. 税務調査の現状と増加の背景

基礎控除の引き下げに伴い、相続税の申告件数が増えたことから、税務署による税務調査の件数も増加しています。特に、相続税の申告漏れや計算ミスが多発しており、調査の結果、追加の税金が課されるケースが多くなっています。

3-1. 税務調査の現状

国税庁によると、令和4年の相続税の実地調査件数は約8,000件に上り、そのうち約7,000件で申告漏れが見つかっています。また、実地調査1件あたりの申告漏れ金額は約3,200万円に達し、1件あたりの追徴課税額は約800万円です。これは、申告漏れや評価ミスが原因で、想定より多くの税金を支払うことになったケースが多いことを示しています。

 

3-2. 税務調査が増加する理由

税務調査が増加した理由は以下の通りです。

  1. 基礎控除の引き下げ:基礎控除額が引き下げられたことで、多くの家庭が相続税の申告対象となり、税務署が申告内容を確認するための調査を行うケースが増えました。
  2. 申告漏れの多さ:相続財産の把握や評価が複雑であるため、申告漏れや過少申告が発生しやすくなっており、税務署による調査が必要になります。

 

4. 税務調査に備えるためのポイント

税務調査を受けるリスクを減らすためには、正確な申告を行うことが重要です。ここでは、相続税の申告において気をつけるべきポイントを紹介します。

4-1. 相続財産の正確な把握

まず、相続財産を正確に把握することが大切です。現金や預貯金、不動産だけでなく、生命保険金や退職金なども含めて、すべての財産をリストアップし、正しく評価しましょう。

4-2. 財産の評価方法

相続財産の評価は、財産の種類によって異なります。不動産の場合、路線価や固定資産評価額を用いて計算しますが、評価方法が複雑なため、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

 

4-3. 税理士への相談

相続税の申告や評価が複雑な場合は、税理士に相談することが効果的です。税理士は相続税に関する専門的な知識を持っており、適切な申告をサポートしてくれます。特に、不動産や株式の評価が複雑な場合は、専門家の助けを借りることでリスクを減らせます。

 

5. 税務調査の流れ

税務調査のプロセスは、一般的に次のように進行します。

  1. 通知:税務署から相続人または代理の税理士に調査の連絡が入ります。
  2. 調査の実施:税務署職員が相続人の自宅や事務所に訪問し、財産の評価内容や申告内容を確認します。
  3. 結果の通知:調査結果が通知され、必要であれば修正申告を行い、追徴課税が発生することがあります。

 

6. 税務調査を避けるための対策

税務調査を受けないようにするためには、次のような対策が有効です。

  • 生前贈与の活用:年間110万円までの贈与は非課税となるため、計画的に財産を生前に贈与することで、相続税の課税対象を減らすことができます。
  • 小規模宅地等の特例:自宅の土地を相続する際、この特例を利用することで評価額を大幅に減額でき、相続税の負担を軽減できます。

 

まとめ

2015年に相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、相続税の申告対象となる家庭が急増し、税務調査の件数も増加しています。特に、不動産や株式など、評価が難しい財産を相続する場合、申告漏れや過少申告が発生しやすいため、税務調査のリスクが高まります。

相続税の申告を正確に行うためには、相続財産の正確な把握と適切な評価が欠かせません。また、生前贈与や各種特例を活用し、相続税の負担を軽減する対策を講じることが重要です。相続税に関する不安や疑問がある場合は、早めに税理士に相談し、適切な対策をとることをお勧めします。