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相続税の税務調査は高確率!申告後にやるべき準備とは?

相続税の申告が終わった後、税務署から突然税務調査の連絡が来ることがあります。これは、しっかりと申告していても決して珍しいことではなく、特に相続税は調査対象になりやすい税目です。この記事では、相続税の税務調査がどのようなもので、どのように備えるべきか、さらに税務調査を受ける際の心構えや具体的な準備方法について解説していきます。

 

1. 相続税の税務調査とは

税務調査は、申告内容に誤りや不正がないかを税務署が確認するための調査です。正しく申告していても、調査対象となることがあり、相続税申告では特にその可能性が高くなります。

 

1-1. 税務調査の種類

税務調査には大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

任意調査

一般的な税務調査は任意調査と呼ばれ、税務署から事前に連絡があり、納税者の協力のもとで行われます。税務署員が自宅や関係先に訪れ、相続財産や銀行口座の内容、必要に応じて通帳や貴重品の確認を行います。質問形式で調査が進行し、特に問題がなければこれで終了します。

強制調査

強制調査は、脱税などの悪質なケースで行われるもので、いわゆる「マルサ」による調査です。裁判所の令状に基づいて行われるため、拒否することができず、強制的に資料が押収されることもあります。脱税の金額が大きい場合など、極めて稀なケースで行われますが、一般的な相続税の申告ではまず該当しません。

 

1-2. 税務調査の時期

相続税の税務調査は、申告書提出後1〜2年以内に行われることが多く、特に8〜11月頃に集中します。相続税には5年の時効があるため、それまでの間に調査が行われる可能性がありますが、通常3年を過ぎると調査の可能性は低くなります。

 

1-3. 税務調査の対象となる確率

相続税の申告者のうち、約20%の確率で税務調査が行われています。国税庁によると、2021年には6317件の相続税に関する実地調査が行われ、そのうち87%で何らかの申告漏れが発見されました。申告漏れによる課税価格は1件あたり3530万円、追徴課税額は平均で886万円にのぼります。

 

2. 相続税の税務調査の流れ

税務調査は、事前の連絡から始まり、具体的な調査が行われるまでには一連の流れがあります。ここでは、その詳細を説明します。

2-1. 税務署からの連絡

税務調査が行われる場合、まず税務署から事前に連絡が入ります。調査の日時や場所を調整し、多くの場合、故人が住んでいた自宅が調査場所となります。この段階での連絡はあくまで調査の予定を確認するもので、具体的な調査内容は伝えられません。

 

2-2. 調査当日の流れ

調査当日は、主に午前中にヒアリングが行われ、午後には財産や通帳などの確認が進められます。

午前:ヒアリング

調査官は、被相続人の生活状況や財産形成の経緯、家族構成、趣味などについて質問します。重要なのは、正直に答えることですが、聞かれたことにだけ答え、不要な情報を提供しないことが大切です。嘘をつくと後々トラブルになる可能性があるため、知らないことは「知らない」と答えるのが賢明です。

午後:財産の確認

午後は主に財産の確認が行われます。通帳や貴重品、金庫の有無、預金の動きなどが細かくチェックされ、申告漏れがないかを確認します。特に通帳は、贈与や名義預金が隠されていないかを調べる重要な資料です。事前に通帳の内容をよく確認しておくことが重要です。

 

2-3. 調査結果

調査が終わると、税務署から調査結果が通知されます。申告内容に誤りがあった場合は、修正申告書を作成して追徴課税を支払う必要があります。納得がいかない場合は、異議申立を行い、場合によっては訴訟に発展することもあります。

 

3. 税務調査でよくある質問

税務調査では、相続人に対して様々な質問が投げかけられます。以下に代表的な質問を紹介します。

  • 被相続人の財産はどのように形成されたのか?
  • 被相続人の職歴、家族構成、生活費、趣味、居住歴
  • 被相続人の金庫や印鑑の場所
  • 生前贈与の有無、金額、贈与の時期
  • 相続人の財産や職業
  • 被相続人の介護や入院費用の詳細

事前にこれらの質問に対する回答を整理しておくと、当日の対応がスムーズになります。

 

4. 相続税の税務調査対象になりやすいケース

税務調査の対象となる確率は一律ではなく、申告内容や財産の状況によって大きく異なります。ここでは、特に税務調査の対象になりやすいケースを紹介します。

4-1. 税理士を利用せずに申告を行った場合

税理士の関与がない申告は、不備やミスが多い傾向があり、税務署も調査を行う可能性が高まります。申告書の内容に不備があると、調査の対象となりやすいです。

 

4-2. 相続税の申告をしていない場合

相続税の基礎控除内に収まっていても、申告しなかった場合に問題が発生することがあります。特に財産の隠しや計算ミスがあると、後から発見されて税務調査の対象になることがあります。

 

4-3. 高額な遺産を相続した場合

遺産が高額である場合、税務署は特に注意深く調査を行います。遺産額が大きいほど、申告漏れや計算ミスが発生しやすく、追徴課税も大きくなるためです。

 

5. 税務調査を回避するための方法

税務調査は完全に避けることはできませんが、調査対象になる確率を減らす方法はあります。

5-1. 税理士に依頼する

相続税申告を税理士に依頼することで、申告書の不備を防ぎ、税務調査の対象になるリスクを減らすことができます。税務調査が入った場合でも、税理士が代理で対応してくれるため、安心です。

 

5-2. 財産を正確に把握する

相続財産を正確に把握し、正しく申告することが税務調査回避の第一歩です。預金口座や不動産、贈与の履歴などを事前に確認し、漏れがないようにすることが重要です。

 

5-3. 相続税額がゼロの場合でも税理士に相談する

相続税が発生しない場合でも、税理士に相談することで、申告漏れや誤算が発生するリスクを減らせます。タンス預金や小規模宅地の減額など、見逃しがちなポイントも税理士のアドバイスを受けることで、適切に対処できます。

 

6. 相続や税務調査に強い税理士の選び方

相続税申告を税理士に依頼する際は、相続税に強い専門家を選ぶことが重要です。以下のポイントを参考にしてください。

6-1. 専門分野を確認する

相続税の申告には専門的な知識が必要です。税理士の専門分野を確認し、相続税に強い税理士を選びましょう。

 

6-2. 面談を行う

事前に面談を行い、税理士との相性や対応力を確認することが大切です。信頼できる税理士に依頼することで、安心して申告や調査に臨めます。

 

6-3. 実績を確認する

実績のある税理士は、税務調査の対応経験が豊富で、トラブルを回避するためのアドバイスも適切です。過去の実績を確認し、信頼できる税理士を選びましょう。

 

まとめ

相続税の税務調査は、申告者の約20%が対象となるため、決して他人事ではありません。調査に備えて、相続財産を正確に把握し、税理士の助けを借りながら正確な申告を行うことが大切です。また、税務調査が入った際には、冷静に対応し、税理士にサポートしてもらうことで、スムーズな進行が可能です。