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任意後見人とは何者?誰がなれるのか、どんな権限があるの?

日本の高齢化が進むなかで、認知症対策の一つとして注目されているのが「任意後見制度」です。特に2025年には高齢者の約20%、つまり700万人が認知症になると予測されています。そのため、将来の備えとして「任意後見人」を選任することが重要視されています。本記事では、任意後見人とは何者なのか、誰がなれるのか、どのような権限を持つのかを詳しく解説します。

 

1. 任意後見人とは?

「任意後見人」とは、将来、本人の判断能力が低下した際に、財産管理や生活の支援を行う人のことです。あらかじめ十分な判断能力があるうちに、自分で任意後見人を選任し、契約を結んでおくのが特徴です。

1-1. 任意後見制度の概要

任意後見制度では、本人が判断能力を失う前に、誰にどのような支援をしてもらうかを決め、公正証書で契約します。契約が効力を持つのは、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときからです。

 

1-2. 法定後見との違い

法定後見は、判断能力が低下してから後見人を選任する制度です。一方、任意後見は将来に備えて自分で後見人を選ぶため、事前に意思を反映できる点が大きな違いです。また、法定後見には契約取消権がありますが、任意後見にはその権限はありません。

 

2. 任意後見人ができることは?

任意後見人は、本人の意思を尊重し、契約に基づいた事務を遂行します。主に財産管理や身上監護が任務です。

2-1. 財産管理

  • 預貯金の管理:通帳を預かり、家賃や光熱費などの支払いを行います。
  • 不動産の処分:施設入所などで資金が必要な場合、不動産を売却します。
  • 遺産分割:本人が相続人となった場合、遺産分割の話し合いを行います。

2-2. 身上監護

  • 介護契約の締結:介護事業者との契約を代行します。
  • 施設入所契約の締結:本人の施設入所時の契約を行います。
  • 医療契約の締結:入院や治療のための医療契約を代行します。
  • 賃貸借契約の管理:住居の賃貸借契約の締結や解除を行います。

3. 任意後見人になれる人は?

任意後見人には特定の欠格事由がない限り誰でもなれます。ただし、高齢の親族を後見人にすると、後見が必要になる時点でその人も高齢になっている可能性があるため、注意が必要です。

3-1. 任意後見人になれない人

  • 未成年者
  • 過去に法定代理人として解任された者
  • 破産者
  • 行方不明者
  • 本人に対して訴訟をしている者

3-2. 任意後見人に向いている人

他人の財産を管理する立場であるため、誠実で信頼できる人が望ましいです。親族や知人がいない場合、弁護士や司法書士などの専門家を任意後見人にすることも考慮しましょう。

4. 任意後見制度のメリット

4-1. 自分で任意後見人を選べる

法定後見とは異なり、本人が信頼する人を自由に選べます。

 

4-2. 柔軟な契約内容が可能

契約は本人と後見人の合意に基づくため、希望に応じた内容にできます。

 

4-3. 任意後見監督人が監督する

任意後見監督人が後見人の業務を監督するため、本人や家族も安心です。

 

5. 任意後見制度のデメリット

5-1. 取消権がない

任意後見人には契約を取り消す権限がないため、悪徳商法への対応が困難です。

 

5-2. 任意後見監督人の報酬がかかる

監督人への報酬がかかるため、長期的なコストが発生します。

 

5-3. 正当な理由がないと解任できない

契約が発効すると簡単には解除できません。

 

5-4. 死後のサポートができない

任意後見契約は本人の死亡とともに終了します。死後の事務処理には別の契約が必要です。

 

6. 任意後見人の選任から事務開始までの流れ

6-1. 任意後見人の選任と契約締結

本人が元気なうちに後見人を選び、公正証書で契約を結びます。

 

6-2. 家庭裁判所への申立て

本人の判断能力が低下したら、任意後見監督人の選任を申立てます。

 

6-3. 任意後見監督人の選任

家庭裁判所が監督人を選任し、後見業務が開始されます。

 

7. 任意後見人の報酬

専門家が後見人となる場合、月額3~5万円が相場です。監督人の報酬も家庭裁判所の判断で決まります。

まとめ

任意後見制度は、自分の判断能力が低下したときに備えて信頼できる人を選任するための重要な制度です。親族の使い込みやトラブルを防ぐため、専門家を任意後見人に選ぶことも有効な手段です。任意後見契約を通じて、自分の意思を反映した支援を受けることができますが、継続的な報酬や契約の管理についても事前に考慮する必要があります。信頼できる後見人を選び、安心して暮らせる未来を準備しましょう。