全員が相続放棄した場合、誰が管理する?遺産管理の責任を徹底解説!
2024年11月01日
相続が発生した際、財産の管理が困難な場合や多額の負債を抱えているケースでは、相続人全員が「相続放棄」を選択することがあります。本記事では、全員が相続放棄をした場合、財産の行方や管理の責任について詳しく解説します。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が遺産を受け取る権利を放棄する手続きです。主に、被相続人の借金などの負担を引き継ぎたくない場合や、相続をめぐる争いを避けたい場合に選択されます。相続放棄は各相続人が個別に行うことができ、全員での放棄も可能です。
相続人の範囲と順序
法律上、相続人には順位が決まっています。
- 第1順位:被相続人の子(養子も含む)
- 第2順位:被相続人の直系尊属(父母や祖父母)
- 第3順位:被相続人の兄弟姉妹
相続人の一部だけが相続放棄をした場合、残りの相続人で手続きを進めます。しかし、全員が放棄すると、次の順位に相続権が移ります。全順位の相続人が相続放棄をした場合、どうなるのか次に見ていきましょう。
全員で相続放棄した場合の財産の行方
相続放棄を行うと、その財産は引き継がれません。では、全員が相続放棄をした場合、財産はどうなるのでしょうか?
財産が国庫に帰属する流れ
相続人全員が相続放棄をした場合、財産は最終的に国庫に帰属します。債務がある場合、プラスの財産から清算され、残った分が国庫に納められます。
- 相続放棄が成立
- 債権者が相続財産管理人の選任を申し立てる
- 相続財産管理人が財産を管理・清算
- 残った財産が国庫に納められる
相続財産管理人の役割
相続人がいない場合、家庭裁判所は「相続財産管理人」を選任します。選任の申し立ては、債権者や特定遺贈を受けた人などの利害関係者が行います。家庭裁判所は、状況に応じて弁護士や司法書士を管理人に任命します。
相続財産管理人の業務
- 財産の保全と清算
- 相続人の捜索
- 債務の支払い
- 財産の国庫への帰属手続き
相続放棄後の管理義務
相続放棄をしても、管理人が選任されるまでは相続人に管理義務が残ります。民法では、相続人は財産を自分のものと同様に管理することが求められます。管理を怠ると損害賠償を求められる場合もあるため、注意が必要です。
管理義務を怠った場合のリスク
- 債務不履行で損害賠償を請求される可能性
- 近隣トラブルの原因となる可能性(放置された不動産の管理不備など)
また、相続財産を勝手に処分した場合、「単純承認」と見なされ、相続放棄が無効になることもあります。
相続放棄後でも受け取れる財産
相続放棄をしても、以下の財産は受け取ることが可能です。
葬儀費用
適正な範囲であれば、遺産から葬儀費用を支払うことが認められます。ただし、豪華な葬儀を行うと、相続放棄が認められない場合もあるため注意が必要です。
死亡保険金・死亡共済金
死亡保険金や共済金は、相続放棄の有無に関わらず受け取れます。ただし、「みなし相続財産」として相続税の対象になる可能性があります。
祭祀財産
神棚や仏壇などの祭祀財産は、相続放棄をしても引き継ぐことが可能です。法律上も、祭祀を継承する権利は相続放棄の影響を受けません。
相続財産管理人の選任にかかる費用
相続財産管理人の選任には費用がかかります。
- 収入印紙代:800円
- 郵便切手代:家庭裁判所指定の金額
- 公告費用:約4,230円
- 予納金:20万~100万円(相続財産からの捻出が困難な場合)
これらの費用は申し立てを行う人が負担します。選任手続きが煩雑なため、専門家に依頼することを検討するとよいでしょう。
まとめ
相続人全員が相続放棄を選択すると、財産は最終的に国庫に帰属します。しかし、相続財産管理人が選任されるまでは、相続人に財産の管理義務が課されるため、手続きを放置することはできません。
また、葬儀費用や保険金など、相続放棄後でも受け取れる財産があるため、慎重に判断することが求められます。手続きや管理に不安がある場合は、専門家に相談するのが賢明です。
相続は一人で抱え込まず、適切なサポートを受けながら進めましょう。当事務所では、相続に関する豊富な知識を持った専門家が皆さまのサポートをいたします。ぜひお気軽にご相談ください。